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対談 | CHART project

アートの力で途上国を支援する
世界銀行に作品を展示
ともに社会課題の解決を目指す

世界銀行 東京事務所 大森 功一

途上国政府に対する融資・技術協力・政策助言を提供し、189か国が加盟する国際開発金融機関である世界銀行。2018年秋、東京事務所の同じビル内での移転をきっかけに、「会議室にchart projectの作品を展示したい」とお声がけいただき、取り組みが始まりました。国連が定めた国際平和デーである2019年9月21日には、「chart project for SDGs in TAKAYAMA」として、世界に向けてSDGsの達成と平和への願いを込めて開催された「飛騨高山 国際平和の日の集い」にともに参加。世界銀行 東京事務所 大森さんとともに、アートを通じて社会課題を伝え、SDGsに取り組む意義を考えました。
(2018年11月~現在 オフィス内作品展示、2019年9月イベント実施)

大森 功一さん

大森 功一さん

世界銀行 東京事務所 上級対外関係担当官

大学でのアジアの歴史的都市保存・開発分野の研究プロジェクトの研究員、キャリアセンターのアドバイザーなどを経て、2000年世界銀行入行。東京事務所広報担当官としてNGOシビルソサエティ、大学、企業との連携構築、世界銀行情報センター(PIC東京)の企画運営などに従事した後、2014年5月まで、ワシントン本部で南アジア地域担当副総裁特別補佐官を務める。2014年5月から東京事務所にて現職。 アメリカン大学国際関係大学院修士課程修了。

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世界銀行 東京事務所 上級対外関係担当官 大森功一さん

  

世界銀行 東京事務所の会議室にchart projectの作品を展示

日常の中で社会課題に目を向けるきっかけづくりに

 

chart project担当 こくぼひろし(以下、こくぼ): 2017年秋にchart projectを立ち上げて以来、chart projectで展覧会を開催する以外にも、作品を展示していただける場所を増やしていこうと動いていました。
そんな中、2018年秋に世界銀行 東京事務所が同じビル内に移転されるタイミングで、会議室に作品を展示していただけることに。もともと、別件でのお打ち合わせの最後に、「このような自主事業も手がけています」とchart projectをご案内したところ、興味をもってくださったのがきっかけでしたね。
各国規模での課題に関する膨大なデータを蓄積している世界銀行としてもさまざまな活動をされていると思いますが、大森さんが最初にchart projectについてお聞きになったとき、どのように思われましたか?

 

世界銀行 東京事務所 上級対外関係担当官 大森功一さん(以下、大森さん): そうですね。まずデータに関する世界銀行の取り組みについてご説明すると、途上国の経済状況を把握・分析するためにデータを収集する以外にも、オープンデータとしてホームページ上で無料公開して、一般の皆様にも広くご活用いただいています。
また近年、データの文字数を減らし、ビジュアルを工夫して見せる取り組みも進めています。いちばん典型的なのは、2018年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)アトラス」です。主要データベースである「世界開発指標」に収録された最新データを使い、SDGsの17の達成目標の進捗を地図や図表でわかりやすく視覚化しています。
そのようにデータのビジュアライゼーションに力を入れる中、社会課題を表すチャートをモチーフにアート作品に生まれ変わらせるchart projectを教えていただき、「面白い」と直感したことを覚えています。
ちょうど新しい会議室に絵画を吊るすレールがあったこともあり、「ぜひ作品を展示させていただきたい」とお願いしました。

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保護・飼育したアマゾンマナティーをアマゾン川へ放流した頭数と放流年を示すグラフを元に、放流が成功してマナティーたちの力だけで子孫を増やし、喜びに満ちた鳴き声を響かせながら優雅に泳ぐ未来のアマゾン川を描いた。
「歓びの群れ」 chartist:藤田雅臣 グラフ提供元:一般社団法人 マナティー研究所

 

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スウェーデンと日本のCO2排出量を示すグラフ線を潜ませながら、CO2削減に取り組むことで、星空がよりきれいに見え、雪山の氷減少も食い止められ、子熊たちが楽しく暮らす理想の未来を描いた。
「Dear North and East」 chartist:たかはしのぞみ グラフ提供元:株式会社ワンプラネット・カフェ

 
こくぼ: 
ありがとうございます。会議室に展示させていただいてから約1年、ご覧になった方々の反応はいかがですか? 

大森さん: 初めて会議室にお越しになったお客様でも、時間がたつにつれ作品に目を向けられる方が多いですね。作品の説明書きを読んで、テーマとなっている社会課題に関心を寄せてくださる方もいらっしゃいます。事務所の同僚たちも、毎日作品を目にする中で愛着がわき、それぞれお気に入りの作品があるようです。
chart projectの作品を展示することで、日常の中で社会課題に意識が向くきっかけをつくっていると思います。

 

 

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前期中等教育を受けられない子どもの割合(男女平均)を示すグラフを元に、読書に夢中になる少年とその様子を憧れのまなざしで見つめる子どもたちの姿を描き、アジアの子どもたちの識字率の課題を表す。
「学校、いけたらいいのになぁ」chartist:aurinco グラフ提供元:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会

 
こくぼ: 
まさに作品からそのようなコミュニケーションが生まれるといいなと思っていたので、展示していただき、本当にうれしいです。作品を手がけたchartistの方々も、とても喜んでいました。
今回の展示作品は既存のものでしたが、世界銀行がお持ちのデータを活用した作品を作ることができれば世界銀行の取り組みを伝えることもできると思うので、今後ぜひ実現したいですね。

 

大森さん: それは素晴らしいですね。
実は、ワシントンD.C.にある世界銀行の本部では「世界銀行アートプログラム」を展開しており、職員でもあるアートキュレーターが館内のロビーや廊下などに展示するアート作品をコーディネイトし、来訪者の方々にさまざまな気づきをもたらそうという取り組みをしているのです。

 

こくぼ: 本部ではすでにアートプログラムを展開されていたのですね。そのほかに、アートを交えた取り組みがあれば教えていただけますか?

 

大森さん: 途上国向けの支援業務の中には、芸術活動を積極的に取り入れて実施されたケースがいくつかあります。

たとえば、中南米で貧困率が最も高いエルサルバドルの首都、サン・サルバドルのユースオーケストラ。貧困率に加え、犯罪率が高いエリアに住む子どもたちの自立支援のプロジェクトで、実施団体が子どもたちに音楽を教えていたのですが、数年後にはコンサートで演奏できるまでになり、ワシントンでもツアーを行いました。

 

同じように、コロンビアの貧困地域における子どもたちの自立支援プロジェクトとして、コンテンポラリーダンスカンパニーを運営する団体が子どもたちにダンスを教えるものがあり、世界銀行の信託基金が使われたこともあります。

また、2019年夏に横浜で行われた「第7回アフリカ開発会議」に合わせて、世界銀行の職員であるドルテ・ヴェルナーと、日本を代表するジャズミュージシャンの渡辺貞夫さんが、それぞれの視点で異なる時代のアフリカを撮影した写真展を開催しました。横浜と東京の2か所で行われた写真展には、合計で約2万人の方々が訪れ、アフリカのさまざまな側面を知っていただくきっかけになったと思います。

 

 

 

 

SDGsに特化したプロジェクト「chart project for SDGs in TAKAYAMA」として「飛騨高山 国際平和の日の集い」に参加

 
こくぼ: 国際的な支援活動の中でも、芸術が果たす役割は大きいですね。
その後、2019年5月に始めた、chart projectの中でもSDGsに特化したプロジェクト「chart project for SDGs」では、「chart project for SDGs in TAKAYAMA」として「飛騨高山 国際平和の日の集い」に、世界銀行とともに参加させていただきました。
世界銀行とこのイベントの関わりについて、改めて教えていただけますか?

 

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当日は、高山市 國島芳明市長を始め、友好都市である平塚市 落合克宏市長、世界銀行 大森氏、一冊の会 大槻明子氏とともに、chart project代表こくぼが、高山市役所に設置された平和の鉦を鳴らし、世界平和を祈願。ステージでは、SDGsの現状やchart projectのコンセプトについてお伝えした

 
大森さん: 「飛騨高山 国際平和の日の集い」のプロデューサーであり、長年のエイズ啓発活動によって親交がある中村照夫さんからお声がけいただいたのがきっかけです。
国際平和デーにおける2019年のテーマが「気候変動」だったことから、17ある持続可能な開発目標(SDGs)と途上国が直面するさまざまな課題について皆さんに知っていただくことで、世界の平和につながるきっかけになるのであればと考え、chart projectとともに参加させていただくことにしました。

 

こくぼ: 気候変動などSDGsの課題が平和を脅かしているという現状もありますし、それらを伝える手法として、chart projectを選んでいただき光栄です。
アートに関心がある方やお子さんに作品を見ていただいたことにも意味があったと思います。

 

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イベント後半は、国際的なコンサートを手がけてこられた音楽プロデューサーの中村照夫氏を迎え、音楽祭が開催された。会場のエントランスホールには、「chart project® for SDGs in TAKAYAMA」の作品を展示し、来場者にchart projectを体感してもらった

 

 

世界中で社会課題を伝え、新たな手法で進化し続けるchart project

 

こくぼ: 我々は、chart projectそのものを広めようとしているわけではなく、あくまでも社会課題を伝えたいという想いが原点で、chartistにも無償で作品を制作していただいています。
さらに、chartistは、これまで社会課題に関するような仕事とご縁がなかった方を中心に依頼しています。テーマと向き合い、悩みながら制作することで、その過程もひとつの社会課題についてのインプットになると考えているからです。
chartistの方々からも、「いつか社会的なテーマの作品を作りたいと思っていたのでうれしいです」という声をいただくことも多いですね。

 

 大森さん: アーティスト同士のつながりという点で言えば、世界銀行では、南アジアの地域協力を推進するため、35歳以下のアーティストを条件に、「Imagining Our Future Together」というテーマで地域の未来を描く作品を公募したことがあります。南アジア8か国から231名のアーティストによる1000点以上の作品が集まり、その中から25人のアーティストを選び、絵画や写真のほか、彫刻やインスタレーションといった作品44点をバングラデシュとインドでお披露目。最後は世界銀行本部で展示し、ハーシュホーン美術館長(当時)のリチャード・コシャレック氏にもお越しいただいて、シンポジウムを開催しました。25人の若手アーティストたちは、フェイスブックで全員つながり、今もそのコミュニティは継続していて、皆さんご活躍されています。
chartistの方々も、ネットワークによって社会課題について語り合い、国内外に作品を発表していけるようになるといいですね。

 

こくぼ: はい。今後も、chartistとなってくださる方々を始め、データを提供してくださる方々、作品を展示してくださる方々にご協力いただきながら、社会課題を積極的に伝えていきたいと思います。
chart projectは、2020年以降、日本では美術館やトリエンナーレにも出展する予定です。また、2019年はスウェーデンで展覧会を開催したので、海外でもさらに広く展開できればと考えています。
特に現在は、「chart project for SDGs」に力を入れていて、SDGsをテーマに17作品を制作中です。

 
大森さん: アートが放つメッセージは、一瞬で強いインパクトを与えます。chart projectがもつ発信力と連動しながら、より多くの人々に社会課題について関心をもっていただけるようになれば素晴らしいと思いますね。

 

こくぼ: ありがとうございます。いつか、世界銀行の本部にもchart projectの作品を飾っていただけるように、引き続き頑張りたいと思います。

 

大森さん: こちらこそ、ぜひよろしくお願いします。またご一緒できることを楽しみにしています。

 

 

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写真左から、世界銀行の大森さん、chart projectのこくぼ

 

 

撮影:堀篭 宏幸 編集:よしだあきこ

 

 

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