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GALLERY | SDGs in ISHIKAWA

くらすひとたち

渡辺 菜緒

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ABOUT ART

中学生の頃、社会科で人口ピラミッドについて勉強した覚えがあります。 富士山型なら、子どもは多いが死亡率は高い、つぼ形なら子どもは少なく高齢化が進んでいる…グラフに表れる形を見れば、その土地の特徴と、どんな問題が起きているのかを知ることができます。どんな解決策があるだろうかと考えることもできます。でも本当は、グラフでは見えてこないことはたくさんあり、その土地と、その土地でくらす人たちのことをわかった気にはなってはいけません。そのことを忘れないよう、逆ピラミッドの珠洲市のグラフに壁画風のタッチで、日々の生活を送る人々を刻みました。(渡辺 菜緒)

ABOUT GRAPH
珠洲市の2040年の人口

作品を制作した2019年から約20 年後の2040年、珠洲市の人口が、各世代別にどのような人口比率になっているのかを予測した人口ピラミッドグラフです。高齢者が増え若者が少ないことを示す、典型的な逆三角形の形を描いています。若年層のなかでも、とくに20-29歳の層がもっとも少なくなっており、高等教育機関の空白地域であることが20代の流出につながっていると推察されます。 | 出典 : 国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計値(2019) | グラフ提供:珠洲市

渡辺 菜緒

金沢美術工芸大学 視覚デザイン専攻(作品制作当時)

金沢美術工芸大学に在学中。日々の生活や地域の人たちとの交流からヒントを発見し、制作に打ち込んでいる。グラフィック制作が得意で、デジタルで描く方法の他にも、水彩絵の具や手芸、立体造形などを使った色々な表現手法を探求している。石川県は自然も綺麗だし、食べるものも美味しく、歴史的な建物や伝統工芸品は創作意欲を刺激してくれ、とてもいい場所だ。地元の次に好き。

MAKING STORY

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立山連邦が見渡せる石川県珠洲市の蛸島漁港

 

 

「SDGs未来都市」珠洲市の課題を美大生がchartに

 

2019年5月より石川県内の各地域で展開している「chart project® for SDGs in ISHIKAWA」。小松市に続き本プロジェクトに参加したのが、石川県北東部、能登半島の最先端に位置する珠洲(すず)市だ。自然資源と人的資本、社会文化資本を活用した持続可能な地域をめざす同市は、2019年6月から内閣府の「SDGs未来都市」に選定されており、2030年SDGs達成に向けた取り組みを進めている。2017年に開催した「奥能登国際芸術祭」を通じて、アートによる地域力の再発見・発信を経験している地域でもあり、chart project for SDGs in ISHIKAWA に積極的に名乗りを上げた。

今回chart projectの作品を制作するアーティストとして、珠洲市が希望したのは、連携協定を結ぶ金沢美術工芸大学の学生だった。珠洲市は、SDGsの達成目標として若年層増加や人材育成を掲げており、本プロジェクトの作品制作過程そのものが、こうしたSDGs達成に向けた一歩となった。

  

 

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chartistとして参加した金沢美術工芸大学の渡辺 菜緒さん

 

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珠洲市職員が金沢美術工芸大学を訪問し、説明会を行った

 

 

珠洲市職員が金沢美術工芸大学を訪れ、地域の課題を共有

 

1月下旬、珠洲市企画財政課職員の金田直之さんと西靖典さんが、珠洲市と連携協定を結ぶ金沢美術工芸大学を訪問。寺井剛敏教授と視覚デザイン専攻の3名の学生に向けて、珠洲市の歴史風土や、現在抱えている社会課題とその背景について説明会を行った。今回chart project for SDGs in ISHIKAWAとして表現するのは、「環境」「社会」「経済」の3つの社会課題に関するグラフ。学生1人につき、それぞれ1つの課題を担当し作品を制作する。プロではなくあえて学生に依頼することで、プロジェクトの制作過程そのものが、関係人口の増加や人材育成にもつながることとなった。

  

 

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珠洲市のchart project作品を制作した視覚デザイン専攻の3名の学生。向かって左から、渡辺さん、日下部さん、竹村さん

 

 

 

 

 

 

 

 

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グラフだけではわからない、人々の姿を刻んだ

 

渡辺さんは、今回chart projectに参加することになり、率直に嬉しい、という感想を持ったと話す。「奥能登国際芸術祭が開催され、ほかにもいろいろなアートのイベントがあって、珠洲市はアートがさかんな町という印象を持っていました。私の地元だったら、こんな取り組み、まずしない。学生として、アートに力を入れている珠洲市に関わることができるのは嬉しいなと思いました」

 

渡辺さんは、珠洲市の2040年の人口ピラミッドグラフを担当した。珠洲市の人口ピラミッドは、高齢化が進み、子どもの数が少なくなることを示す典型的な逆三角形となっている。日本全国多くの地域で見られる形といえるが、だからこそ渡辺さんは、珠洲市に生きる人たちひとりひとりに思いを馳せたという。「グラフを見て、ああこれ中学の時に勉強したな、と。”富士山型は子どもの数が多いが死亡率も高い、アフリカに多い形である”とか教科書に書かれていました。その時、知識としては理解しつつも、私は何がわかっているんだろう、私はこれでアフリカのことをわかった気になっているのはいやだなあ、と思っていて、その気持ちをまた思い出しました。そこが今回の作品の出発点になったと思います」(渡辺さん)

 

  

 

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漫画のようなタッチで、グラフに人々の暮らしを「刻んだ」

 

「グラフは、いろいろな情報を一目見てわかるように示したもの。とても便利だけれど、その地域の歴史や暮らしについては、何も教えてくれません。でも、私たちはグラフを見て情報を読み取ったら、その土地を理解したような気持ちになってしまいます。だから、グラフだけど、グラフのなかに、珠洲市に住んでいる人たちの暮らしを刻みました。描いた、というよりも、刻んだ、という表現をさせていただきたいと思います」(渡辺さん)

 

 

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日本海が見渡せる 珠洲市の街並み

 

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宝立小中学校の子供たちが地元の農家の方から田植えを指導してもらう 生活の知恵や暮らしを後の世代に残していく取り組み

 

 

 

 

 

 

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制作して終わりではなく、興味を持ち続けたい

 

グラフの線をもとに、制限された状態で描くという初めての経験により、新しい作品ができたという渡辺さん。「今一番気になるのは、このchart project作品を見た方が、何を思ってくれるのかなということ。私が意図した通りに伝わると思うのは傲慢なので、見た方が何を受け取るのか、とても興味があります」と作品が完成した今の心境を語る。

 

 

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渡辺さんは現在、金沢美術工芸大学の3年生。まさにこれから社会に出ていくというタイミングでchart projectに参加したことは、今後の活動にどのような影響を与えたのだろうか。
「私は今のところ、将来アーティストとして活動していきたいとは思っていません。ただ、いろいろな景色を見たり、音楽を聴いたりするなかで、自分がきれいだな、おもしろいなと思った気持ちを大切にしたい。その思いを作品にすることで自分を肯定する、そんな作品作りをしてきました。だから今回、社会問題をテーマにした制作は、とても貴重な体験でした。私が今思うのは、ここで満足しないようにしたいなと。なんか関わった気でいるけれど、私は機会をいただいて絵を描いただけ。もともと社会問題や世の中の動きに疎い私は、このままいくと一生関わらないと思います。だから満足しちゃいけない。ニュースや、社会のことを意識したり、地域の人たちの暮らしとかお話をもっと聞いたりして、もっと世の中に関わっていきたいと思います」(渡辺さん)

 

 

 

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泉谷 満寿裕 珠洲市長 

 

珠洲市長からのメッセージ 

 

珠洲市の課題である人口構成を、個性的な感性で表現していただき、ありがとうございます。この素敵なアートを通して、市民の皆様をはじめ、多くの方が珠洲市や日本、そして世界の未来を考え、SDGsの達成に向けた具体的な行動につながることを願っています。

 

 

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「珠洲市の2040年の人口」のグラフを提供してくださった能登SDGsラボ サブコーディネーター 高 真由美さん

 

能登SDGsラボ 高さんからのメッセージ 

 

2020年から更に人口が減少し、少子・高齢化が進んでいる“2040年を予測した人口ピラミッド”は、ショッキングで思わず目を背けたくなります。しかし、珠洲市の人々の暮らしが表現され、刻まれている「くらすひとたち」は、渡辺さんの作品に対する思いや表現されている内容について、考える、話し合うきっかけが生まれてくると思います。これを機会に皆さんと一緒に考え、 話し合うことを通じて、珠洲市の文化や暮らしを守っていきたいです。

 

 

その他の作品

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